安田峰俊さんの著書と編著。どちらもレポートとしてめちゃめちゃ面白く、一気に最後まで読んだ。
安田峰俊さんの著書と編著。どちらもレポートとしてめちゃめちゃ面白く、一気に最後まで読んだ。
さいはての中国 (小学館新書 や 13-1)
*Amazonで安田 峰俊のさいはての中国 (小学館新書 や 13-1)。アマゾンならポイント還元本が多数。安田 峰俊作品ほか、お急ぎ便対象商品は当日お届けも可能。またさいはての中国 (小学館新書 や…*www.amazon.co.jp{.markup–anchor .markup–mixtapeEmbed-anchor} 野心 郭台銘伝
「腐った卵を産む鶏は、場所や飼い主を替えても、決してよい卵を産まない」 2016年8www.amazon.co.jp{.markup–anchor .markup–mixtapeEmbed-anchor} 本としては「どっちも面白い、ぜひ読もう」と言えるが、僕にとって圧倒的に面白かったのはさいはての中国のほうだ。
テリー・ゴウ伝は彼が家族思いだったり恋愛べただったというパーソナリティの話はたくさん出てくるが、フォックスコンの技術/システムやEMSというビジネスの話はほとんど出てこない。
たとえばリーダーシップ(専制的)や大胆な投資という話は何度も出てくるが、そういう会社だと他のEMSに比べてどこが違ってどこが有利、という話は出てこない。フォックスコンと他の会社がシステム的にどう異なったのかという話は本書を読んでも僕はわからなかった。
かわりにテリー・ゴウの故郷や幼馴染みの話、シャープのボロい独身寮に社長が泊まり込んだエピソードなどはいっぱい出てくる。子供の頃に読んだリンカーンの伝記にも、丸太小屋で生まれて苦労した話とかは出てくるがアメリカ大統領制の仕組みの話はでてこないので、つまりはそういう本だ。タイトルが「郭台銘伝」なので、タイトルどおりといえる。
僕は「フォックスコンを支える技術」みたいな内容を勝手に期待してたのだが、そうではない。もちろん安田さんが書いてるので面白い。
中国のプロパガンダや経済特区、中国というシステム
さいはての中国はもっといろいろなテーマで、あまり他のメディアで取り上げられない中国や中国人の活躍するカンボジア、埼玉の西川口などまで含めてルポし、まとめたものだ。すごい取材力とインタビューで、まったく知らなかった中国の一面がたくさん出てくる。最高に面白くて一気に読んだ。
「さいはての中国」ではすごく具体的に、経済政策などで強引で住民無視の政府のやり方はたくさん出てくる。そこにムリな書き方がされてることはまったくなく説得力に満ちている。こうした行政の大きいシステムの施策とその効果がうかがい知れるのは面白いし、僕はもっと中国政府が意図を持って組織的に仕掛けていると思っていたカナダの反日プロパガンダが、現地ではすごく善意ある人たちが本気で人道的に行い、そこにあまり質の良くない日本人の市民運動家たちが間違った情報を提供している、しかもその市民運動家達もやってる行動はジャーナリストの取材の邪魔とかしててきわめて社会悪そのものなんだけど、本人はどうやら善意で動いていそうなことなんかは読んでいてゾクゾクした。
「さいはての中国」に紹介されている雄安新区や、ほか貴州などの国家主導プロジェクトの様子を見て、あまりうまく行かなそうだなと思えた。
政府と政府からお金をもらう人たちだけが集まってもうまくいかない。自分で手を動かすエンジニアが、商売のタネが見つかって、自分たちで会社を作れてこそテクノロジーが生まれ、人々の生活が変わる。そうした社会の変化は政治家や社長のビジョンでなく、実際の作るという行為の結果だと思っている。テクノロジーの話にしか興味ないと書きつつ、「やりたいと思ってやらないと技術は成り立たない。思いは行動に現れ、言葉には現れない」という考えでいる。
僕は現在の技術を国やお金のチカラだけで発展させるのは難しいと考えていて、いろいろな国でシリコンバレーもどき国家プロジェクトが行われているけど全部コケている。試行錯誤が必要な研究開発と計画手動の国家プロジェクトは相性が悪く、上海や深センといったエンジニアが集まりそうなポテンシャルのある場所だけで中国の経済特区は成功して他はコケている。
xx地域にすごく投資がされててすごい、と言う話はよく聴くが発信してるのはその地域に人を呼び込むことがビジネスになる人だったりして、具体的にどういうことが行われているのかの話が少なくて理解しづらい。
もちろん、実際は見に行ってそこのエンジニアがしてることを見ないとよくわからない。中国に限らずほとんどの国で、僕は行ってみると聞いてたのと全く違う体験を味わう。中国の経済特区やさいはてでも、間違いなくそうだろう。
僕の書くもの、興味あるもの
以下は書評と関係なく、2冊の本を読みながら考えたものだ。
僕は技術そのもの、製品そのものへの関心が強くて、それに比べると人への関心は多くないみたいだ。
たとえば発明家や会社の社長にインタビューしたとしたら、たぶん「どういう製品やサービスを作っているか」「どういう想いや想いでつくり、苦労したのはどういうところか」みたいな質問になるだろうし、僕がインタビュー記事はそんなのばかりだ。嫁さんとどこで出会ったとかどういう環境で育ったとかは、自分から聞いたことがない。
ここでいう技術にはサービス、たとえば「STEM教育」みたいなものや、会社そのものなども含まれる。そういうものだと人間についての質問も含まれるけど、とにかく成果物やそれを生み出した手法に興味があり、パーソナリティや「日本と比べてどうですか?」みたいな本人と関係ないことは、それらに比べると気にならない。技術的なバックグラウンドは気になる。大学での専攻は必ず聞く。逆に聴いたことがないのは結婚してるかどうか、とかだ。
「テクニウム」じゃないけど、技術にもキャラクターはある。
たとえば一眼レフのレンズを作るような高精度のアナログ技術は高度の蓄積が必要になる。
小ロット多品種の製品組み立てにはその地域全体の産業エコシステムが必要だ。逆にジーパンなどの衣服は大量の労働者がいる。たとえば1万円のスマホを買ったら製品原価(マーケティングなどを除く原価)の多くは部品代で労働コストは10–20%、ジーパンだと70%をだいぶ超える。
AIにいま現在何ができて、この次に来そうなのはどのブレイクスルーで、その結果何が可能になるのか。
たとえば最近話題になった中国政府がスパイ用のチップ開発して混入させた{.markup–anchor .markup–p-anchor}ニュースを見ても、本当にそういう「アンテナもコネクタもないチップが、上位のネットワークで監視されてるサーバの中でどうやって通信するのか」が気になるし、たぶん技術的に難しいのでその部分はトバシか報道間違いだろう、と予測したりする。
まちがいなく中国の政府は色々悪いことをしてる。産業スパイも住民の監視もしている。けど、おそらく違うやり方ではないんじゃないか。
こういう興味の持ち方は、技術オタク、エンジニアリング好きと言えるだろう。僕自身が、その中でどれぐらいきちんとエンジニアしてるかはともかく、友達もそういう気質の人が国籍を問わず多い。STEM教育分野の人には社会運動家っぽい人とエンジニアっぽい人がいるが、僕が仲良くなるのはたいてい後者である。最近訳したバニーのハードウェアハッカーでは、プロジェクトのほとんどがxobsという同僚と行われているが、200ページ近いその部分でxobsのパーソナリティに触れられたのは「ポニーテールで自分のペースをもっていてスコットランドのキルトを着てる」の2–3行だけだ。
ハードウェアハッカー ~新しいモノをつくる破壊と創造の冒険
*Amazonでアンドリュー"バニー"ファン, 山形 浩生, 高須 正和のハードウェアハッカー ~新しいモノをつくる破壊と創造の冒険。アマゾンならポイント還元本が多数。アンドリュー"バニー"ファン, 山形 浩生, 高須…*www.amazon.co.jp{.markup–anchor .markup–mixtapeEmbed-anchor} 一方で、今の中国に興味がある人のほとんどは人(歴史)かお金に興味がある。中国がテクノロジー好きの関心を引くようになったのは本当にここ4–5年ぐらいのものなので、それよりキャリアが長い人は別の面に惹かれててあたりまえだ。技術オタクで中国も好き、ガジェットの分解レポートを良く書くという書き手がもっと増えて欲しいなーと思うけど中国関係だとあまりいない。
釣ることやエバることが目的に書かれたと感じるような記事はどうも好きになれないが、中国の記事だとそういうのが多いように感じる。
安田さんや山谷さん、高口さんなどの書く中国の話は、「もっと知りたい」という好奇心をコアに、その行為を仕事として成り立たせる実力もあって大好きなのでいつも楽しみにしている。
By TAKASU Masakazu/高須正和{.p-author .h-card} on October 7, 2018.
Canonical link Exported from Medium on February 6, 2026.