現代中国の産業集積―「世界の工場」とボトムアップ型経済発展―


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伊藤 亜聖
名古屋大学出版会
売り上げランキング: 47,832

Amazon.co.jpで詳細を見る 伊藤さんの研究室に伺った際に献本いただいた。大感謝。
専門書であり、雑貨や照明器具といった僕がよくわからない分野の本なので、誤解が多々あると思いつつ、楽しく読みました。

本書の分析結果はシンプルで、帯に以下のようにまとめられている。

世界の工場=中国は終わらない*
中国経済の急成長をもたらした真の強みとは。各地に叢生した産業集積の圧倒的な役割に着目、「百均のふるさと」義烏などを徹底的に踏査して、その競争力の源泉を掴み出す。安易な中国経済終焉論を斥け、絶え間なく生まれ変わっていくダイナミックな姿を鮮やかに捉えた俊英の力作。*

僕自身は、中国のメイカー産業を捉えたという意味ではちょっと似たテーマの著書メイカーズのエコシステム{.markup–anchor .markup–p-anchor}のなかで、「ミシンだけでできるジーパン作りとか、安い機械と大量の労働力で行われる作業はもっと賃金の安い発展途上国にさっさと行くが、投資回収に時間かかる、高額でメンテのために地元にもエンジニアがたくさんいなきゃならないような機械を使う産業は簡単に動かない」的な事を書いた。解説の山形さんも、「少なく見てもあと5年はこの面白い状況が続くはずだ」と書いている。

伊藤さんと話したとき、「それについては同意で、ただし’簡単に移転しない産業’は他にもいろいろある」と教えてもらった。

本書の前半は義烏の雑貨市場と、雑貨を作っている企業、バイヤーについてのレポートである。百円均一などに並んでいる雑貨は、ほぼすべて義烏から来ているようだ。義烏で買えるものは低品質低価格で、真っ先にもっと途上国に行くような気がするが、なぜ義烏が今も(そして当分)強みがあるかというと、

  • [前はドバイやシンガポール、香港などが雑貨の中継地になっていたが、今は世界が小さくなって、世界各国の販売店が直接義烏に買い付けに来るようになってコストが下がった。市場に行くと8000人ぐらいの外国人バイヤーが長期滞在して仕入れをしている]
  • [そういう店は問屋ほど大量に仕入れないから、「コンテナ一つ」じゃなくて「段ボール一箱」で買いたいし、一回の渡航でいろんなものを仕入れたい。義烏にはそれに答える市場がある]
  • [中国国内の十万社から義烏に雑貨が集まり、何でもある。かつ、雑貨やカバンなどはかなり流行に敏感で、たとえば映画が公開された瞬間にキャラクターものをつくるみたいな事情が多々あるが、義烏のまわりの企業はそういうものが圧倒的に早くて小ロット。(ちゃんとライセンス取ってるかはともかく。)デカい工場だけがぽーんとある発展途上国はもっと遅いし、大量じゃないと作れない]
  • [そういう仕事だと、機械が揃ってるかとか、雑貨の完成までの仕事を以下に短期間で複数の企業でシェアできるかみたいなエコシステムの充実度が、労働者のコストより大事で、今のところ義烏が最強で、その次は予想もつかない]
  • [労働力についても、正規労働者の賃金は高騰してるが、おばちゃんの内職などで作れる雑貨も多く、そういうのは発展途上国の正規労働者よりいい品質で安いコストだったりする]
  • [ただでさえ集積している上に、今はTaobao等インターネットを使ってより中間コストを下げ、フレキシブルさを上げる取り組みが自発的に行われている。] みたいな調査結果が上がっている。
    本書の後半は広東省中山市古鎮の照明産業のレポートだが、そこでも「集積=なんでもあること」と、フレキシブルさの強さに触れられている。
    どちらも蓄積の始まりは改革開放の1980年過ぎだが、形ができあがったのは2000年代で、今現在も成長を続けているようで、変化する方が常態であるようだ。
    ちょっとネットで探すと、中国人が日本語で義烏での買い付けをサポートするバイヤーのサイトがいくつも見つかる。
    どこのサイトにも東京ドーム六個分の広さ、三十万個の品数という言葉が踊る。義烏の雑貨は中国全土の十万社から集まってくるそうだ。そのサイズの市場を作れ、エコシステムを作れる国は、そう簡単に現れないだろう。

もちろん、いつかは今活発に工夫しながら商売している人たちも老いていくし、そのときに世界がガラッと変わる(たとえばインターネットとEMSで流通のルールが変わった)ようなことが起きたときに、ついて来れなくなることはあるだろうけど、、

メイカーズのエコシステム 新しいモノづくりがとまらない。 (OnDeck Books(NextPublishing)) posted with amazlet{.markup–anchor .markup–p-anchor} at 16.10.04

インプレスR&D (2016–03–28)
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