なぜ、習近平は激怒したのか 人気漫画家が亡命した理由(祥伝社新書)
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高口康太
祥伝社
売り上げランキング: 111,342
Amazon.co.jpで詳細を見る 結論を先に書くと、ニコ技深圳観察会{.markup–anchor .markup–p-anchor}の参加者とか、深圳に来たことある人ならオススメな本です。
ニコ技深圳観察会、第5回を数えるようになってもともと中国情報に詳しい人たちも参加してくれるようになった。特に「メイカーズのエコシステム{.markup–anchor .markup–p-anchor}」というアウトプットが生まれて、その内容があまりこれまでの中国研究では見られなかったことや、自身が起業家でもあるShaoさんがメイカー以外の中国FINTECHについての研究{.markup–anchor .markup–p-anchor}を始めたり、鈴木さんの分解ブログ{.markup–anchor .markup–p-anchor}が話題を呼ぶなど、頭も手も使う面白いコミュニティになりつつある。
先日東京に戻ってきたときに、中国FINTECHの情報を共有したくて飲み会をやった。
高口康太{.markup–anchor
.markup–p-anchor}さん(第5回に参加。中国情報に詳しいライター)
山谷剛史{.markup–anchor
.markup–p-anchor}さん(高口さんから紹介してもらった。「中国のインターネット史
ワールドワイドウェブからの独立(星海社新書){.markup–anchor
.markup–p-anchor}」というメチャメチャ面白い本を書いている。)
木村公一郎{.markup–anchor
.markup–p-anchor}さん(第4,5回に参加。JETROアジア経済研究所{.markup–anchor
.markup–p-anchor}所属でつい最近まで香港大学にいた。深圳についてもレポート{.markup–anchor
.markup–p-anchor}を書いている。)
Shao{.markup–anchor
.markup–p-anchor}さん(第4回に参加、その後も起業家を集めた深圳ツアーを開催するなど、この1年で4回深圳に渡航し、上記のFINTECH研究をしている)
山形浩生{.markup–anchor
.markup–p-anchor}さん(第1,3,5回に参加。メイカーズのエコシステムの解説ほか、香港・深圳との関わりは深い)
柏木亮二さん(山形さんの紹介、フィンテック{.markup–anchor
.markup–p-anchor}というそのものずばりの本を書いている。献本いただいたので次に読みます)
などなどで、メチャメチャ面白い話が聞けた飲み会だったのだけど、高口さん・山谷さんの中国の雰囲気・空気の話はすごく面白かった。二人とも中国語はぺらぺらで、中国のWebサービスやSNSを使いこなしていて、話から空気が伝わってくる。
この「なぜ、習近平は激怒したのか 人気漫画家が亡命した理由{.markup–anchor .markup–p-anchor}」は、その高口さんが風刺漫画家の辣椒(ラージャオ)にインタビューしつつ、中国のネット世論、ネット論壇の変化を書いた本だ。山谷さんの「中国のインターネット史 ワールドワイドウェブからの独立(星海社新書){.markup–anchor .markup–p-anchor}」や、中国が豊かになる前から今までの鄧小平の本{.markup–anchor .markup–p-anchor}につづけて読んだので、さらに興味深かった。
すごくおおざっぱに中国の近代史をまとめると、
1.外国の帝国主義にやられてボロボロだった(世界のチャイナタウンの多くはこのとき逃げ出した華人でできている)時代をナントカ統一した毛沢東
2.反動でアンチ資本主義アンチ国際化をやりすぎて餓死がでるぐらい貧乏になった文革/大躍進
3.その反対で改革・開放をやり、軍事費を削減して外資を入れて国を富ませた鄧小平
4.結果として貧富の差が広がりすぎたし、社会が富んで多様化したひずみも出てきた、しかも経済成長も1990年代みたいな急成長は望めない←イマココ
みたいな状態になると思う。
中国のインターネット人口は7億人、国民の過半数が日常的にネットにアクセスしている。そのインターネットの普及は1998年ぐらいから、本当に突然に始まって、社会のいろいろなことを変えている。それは日本も変わらず、その頃のインターネットは無法地帯だった。それがログの保存義務とかが整理されて、掲示板への書き込みを元に逮捕者が出るようになったりして、実空間とそこまで変わらなくなってきているのは、日本も中国も変わらない。
書籍ではネット論壇の黎明期、2010年頃のインターネット民の華々しい活躍がいくつも出てくる。政府の地上げをネット初の反対運動が対抗して、最終的にその村で普通選挙を実現した話。(ググる{.markup–anchor .markup–p-anchor}と、一軒家のまわりを全部掘ってしまった画像がいっぱい出てくる)ネット民=中間層は環境意識も高いから、下水油が台湾に輸出されていた問題でも大きく反応し、大衆運動に対して中国の政府は担当者の更迭をしたり対策を打ったりしている。同じ事を北朝鮮あたりでやったりしたら皆殺しになりそうだけど、中国はそのぐらいには世間体を気にするようにできているらしい。
ただし、ここ2–3年になるとネット民の活躍は下火になる。政府が「ネットで受ける方法」を急速に身につけ、プロのネット工作員や政府に雇われたライターが人気を博すようになる。それにつれて、在野のネット有名人はだんだん好きなことが言えなくなったり、逮捕されたりする。今回インタビューされている辣椒(ラージャオ)も、もう中国には帰れなさそうだ。今の中国の大手SNSはすべて中国政府と良い関係を築いていて、アカウントを立てるたびにBANされ、作品の発表も難しい。
僕は2014年から何回か中国に行っているが、この本にある変化のいくつかは自覚できる。VPNは2014年と今年の16年ではるかにつながりづらくなったし、VPNなしで中国からネットが使えて中国のサービスにも登録できる香港のデュアルナンバーSIMはこの8月ぐらいから販売停止になってしまった。
本全体が興味深い事例で溢れているが、終章の辣椒(ラージャオ)の将来への見通しがまたすばらしい。今の中国共産党はいろいろ不公正や弾圧をしている。「もっと良い形」はおそらくあるだろう。だが、いきなり国が崩壊するほど悪手は打っていないし、たとえ権力維持のためだとしても、飢える人を減らし富む人を増やす行為は必死で行われていて、株式市場の大混乱などもありながら、手は打っている。だから、これからも右往左往しながら今の状態が続き、自分は国に帰れないのではないか。
ネットで生まれた中間層も、第一の関心は生活の安定で、ネット論壇にいる人たちの言葉はそこにあまり説得力がない。(実際に国を富ませたし、現時点で金を持っている共産党のほうが説得力がある)
本から感じるのは、先進国になりつつある中国の悩みだった。わかりやすい強権独裁の弾圧で本が満ちてるわけではないし、北朝鮮とはだいぶ事情が違う。
しかも、今の為政者たちをモンスターと描いているわけではない。それだけで、反対意見をモンスター化する大半の本とは明確に一線を画す良い本になっていると思う。
書いてる高口さんも、中国国内の文献を含めて膨大な調査データを、ポップなものから政府の報告書まで読みこなす大変なインテリである。中国政府の公式発表や統計を、バックグラウンドまで含めてインテリらしく誠実に書いている。(孔子平和賞の生まれたきっかけとか)
「中国の士大夫に憧れがあるので、字が汚いのは恥ずかしいのだけど、、」といいながら、僕の本にはサインをしてもらった。

明快な結論が出ているような本ではないが、都市や国といった巨大なものを一言で語ってわかった気になるような考え方に、僕は距離を置こうと思っている。メチャメチャ面白い本だった。

中国のインターネット史 ワールドワイドウェブからの独立 (星海社新書) posted with amazlet{.markup–anchor .markup–p-anchor} at 16.09.27
山谷 剛史
講談社
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メイカーズのエコシステム 新しいモノづくりがとまらない。 (OnDeck Books(NextPublishing)) posted with amazlet{.markup–anchor .markup–p-anchor} at 16.09.27
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