中国IC設計の世界を深掘り!「分解のススメ」イベントでFabless 100ランキングから見えたもの


中国IC設計の世界を深掘り!「分解のススメ」イベントでFabless 100ランキングから見えたもの

第20回の今回では、「2024年中国IC設計Fabless 100排行榜」 をテーマに、参加者がリストを見ながら中国のIC設計企業の今について語り合いました。

「分解のススメ」は、2020年のコロナ禍に始まったオンラインイベントで、「ブラックボックスにしない文化を作る」 ことを意識し、様々なものを分解・解析して知見を共有しています。今回のテーマは、物理的な「分解」ではなく、中国のIC設計業界という大きなテーマを、ランキングリストという形で「分解」し、掘り下げていくという、少し趣を変えた内容でした。

イベントの導入では、「分解の進め」の成り立ちや、これまでに分解した中国製マイコン(特にSTM32互換品など)や製品(安価なTWSイヤホンなど)から見えてきた中国のハードウェアエコシステムの独特な構造について触れられました。例えば、小規模企業でも独自マイコンにアクセスしやすい構造や、デザインハウスが製品化までサポートする体制、比較的オープンな情報共有の文化 などが挙げられました。また、RISC-VのようなオープンISAによる設計が盛んであることや、Taobaoでチップ解析サービスが気軽に利用できる文化 も、中国のIC設計を特徴づける点として紹介されました。

2024年中国IC設計Fabless 100ランキングとは?

今回のメインテーマとなったのは、グローバルな電子技術メディアグループ AspenCore が発表したこのランキングです5。このリストは2021年から毎年発表されており、中国IC設計業界の競争力、全体トレンド、そして将来の発展方向を観察・分析するための重要な指標となっています。

ランキングは、3つの総合実力指数(上場企業、EDA企業、IP企業) と、10の主要技術カテゴリー(MCU、PMIC、AIチップ、無線接続、プロセッサー、アナログ、パワーデバイス、センサー、メモリー、RF/通信) のTOP10で構成されています6。選考基準としては、中国大陸・香港・マカオに本社があるFabless企業であること、自社開発チップが量産・商用化されていること、そして複数の特許や高い開発能力を持つことなどが挙げられています。

ランキングリストを見ながらのディスカッション

イベントでは、このFabless 100のリストを画面共有しながら、参加者が知っている企業や気になる企業について自由にコメントし、深掘りしていきました。多くの参加者にとって、リストには「知らない会社がたくさんある」というのが最初の印象でした。

ディスカッションの中で、以下のような点が特に注目されました。

MCU: GigaDevice(兆易创新)のように、かつてSTM32互換品で知られながらも、今や超有名メーカーとなった企業の変遷。8051互換やRISC-Vコアを持つ多様なMCUメーカーの存在。NationZ(国民技术)のようにセキュリティMCUに強い企業。ファブレスながらも、独自技術や特定のアプリケーション(スマートカードなど)に特化した企業が多いこと。ある参加者は、NationZのウェブサイトにSTM32からの乗り換えを促す情報が堂々と掲載されていることに驚いていました。また、Fudan Microelectronics(复旦微电子)のような大学発の企業や、FADA(航顺芯片)のような国営系企業がリストに名を連ねていることも話題になりました。

PMIC: Silergy(矽力杰)、AWINIC(艾为电子)などが挙げられました。特にAWINICについては、「めちゃめちゃよくできている」「必要十分な機能がばっちり入っている」「使いやすい」 といった賞賛の声が上がりました23。電源管理チップでありながら、コントローラー機能も内蔵し、外部部品を減らして「とりあえず繋げば動く」ような設計思想のチップが多いことが、中国メーカーの特徴として挙げられました。

AIチップ: Cambricon(寒武纪)、Intellifusion(云天励飞)、Axera(瀚博半导体)、Black Sesame(黑芝麻智能)といった自動運転やエッジAIに注力する企業が並びました。Axeraについては、特にカメラ画像処理分野で実績があり、Honorなどのスマホにも採用されていることが紹介されました。Horizon Robotics(地平线)のような大手AIチップ企業がリストにいなかったことは参加者にとって意外だったようです。

無線・通信チップ: Bluetrum(中科蓝讯)、Bestechnic(恒玄科技)といったTWSイヤホン向けチップで有名な企業やTelink(泰凌微电子)のようなワイヤレスマウスなどで実績のある企業 が挙げられました。ASR Microelectronics(翱捷科技)やUNISOC(紫光展锐)といったセルラー通信系の企業もリストアップされています。

プロセッサー: HiSilicon(海思半导体)やUNISOCといったモバイル向け大手だけでなく、Phytium(飞腾)、Loongson(龙芯中科)のような国産アーキテクチャ(ARM互換、MIPS互換)を手がける企業も含まれています37…。Rockchip(瑞芯微电子)やAllwinner(全志科技)は、シングルボードコンピューターやマルチメディア分野での実績が知られています。

センサー: OmniVision(豪威集团)やGalaxyCore(格科微电子)といったイメージセンサー大手、Goodix(汇顶科技)のような指紋センサーなどで知られる企業が挙げられました。イメージセンサーやその他のセンサーについても、「すごく手間がかかる部分をワンチップにまとめていそう」 といった、高集積化・使いやすさへの意識が感じられる設計思想について議論されました。

メモリ: GigaDevice、Puya Semiconductor(普冉半导体)といったNORフラッシュに強い企業や46…、CXMT(长鑫存储)、YMTC(长江存储)といったDRAM/NANDフラッシュの製造・開発大手が含まれています。安価な製品によく使われているメーカーの名前も挙がりました。

パワーデバイス: StarPower(斯达半导体)、CR Micro(华润微电子)、BYD Semiconductor(比亚迪半导体)など、IGBTやMOSFETといったパワー半導体の有力企業が並びました。EV市場の拡大など、中国国内の巨大な需要がこれらの産業を後押ししている可能性が示唆されました。

ディスカッション全体を通じて感じられたのは、中国のIC設計業界が単なる模倣から脱却し、市場ニーズに合わせた独自の高機能・高集積チップを開発する力をつけてきているということです。特に、コンデンサー1つでも減らそうとするような徹底したユーザー視点や、外付け部品を減らしてワンチップにまとめる努力が、多くの企業のチップ設計から見て取れるという点は、参加者の間で強く印象に残ったようです。このような設計思想は、日本の半導体メーカーとの大きな違いとして挙げられました。

もちろん、ハイエンドな最先端プロセス技術においては国際的な差がまだ存在することや、国営企業と民間企業の違い、NDAといった秘密保持の概念が異なる商習慣3 といった側面についても触れられました。しかし、国内の巨大市場と、「継続的な技術革新を通じてサプライチェーン全体の競争力を向上させる」という強い意識を持って、中国のIC設計業界は急速に進化を続けていることが、ランキングと活発な議論から明らかになりました。

まとめ

今回の「分解の進め」イベントは、中国IC設計Fabless 100ランキングというリストを切り口に、中国半導体業界のユニークなエコシステム、技術トレンド、そして企業ごとの特徴を深く知る貴重な機会となりました。多岐にわたる企業が登場するこのランキングは、まさに中国IC設計の「今」を映し出す鏡と言えるでしょう。

イベントでは、リストに載っていないものの興味深い中国企業や、ハードウェア開発コミュニティの動向(例: JLC PCBのイベント)など、周辺情報にも話が及び、中国のハードウェア・半導体分野の層の厚さを感じさせられました。

中国IC設計の動向は、今後も世界の技術トレンドに大きな影響を与えるでしょう。今回のイベントで得られた知見を元に、今後も中国企業のチップや製品を「分解」していくのが楽しみです!

#分解のススメ 20回 中華ICメーカー100リストを見ながらワイワイ まとめ
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元になった資料

By TAKASU Masakazu/高須正和{.p-author .h-card} on May 12, 2025.

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