そういうシンポジウムを多くやるニコニコ学会βは5年間の活動を経て終了した。 僕が主催するニコ技深圳観察会を関連イベントとして紹介してもらったし、5年間一緒に遊んでくれた人たちに感謝したい意味もあって、僕がニコニコ学会βから影響されたことをまとめてみる。


そういうシンポジウムを多くやるニコニコ学会βは5年間の活動を経て終了した。
僕が主催するニコ技深圳観察会{.markup–anchor .markup–p-anchor}を関連イベントとして紹介してもらったし、5年間一緒に遊んでくれた人たちに感謝したい意味もあって、僕がニコニコ学会βから影響されたことをまとめてみる。

ドメインとかWebの管理とか、名前を使うときの許可とかをするためのニコニコ学会β交流協会。終わらせるためにはこれが必要。

■ニコ技深圳観察会
ニコ技深圳観察会は2014年から進めている。自由参加・現地集合で深圳を観察しに行き、結果をブログにまとめるのが活動の内容で、これまで6回行っている。フォーマットとしてはニコ技ディズニーシー観察会{.markup–anchor .markup–p-anchor}を踏襲したものだ。
ニコ技との関連は拙著メイカーズのエコシステム{.markup–anchor .markup–p-anchor}に多く書いたので、今の記念にニコニコ学会βから受けた影響もちょっと書いておきたい。

結論だけでいうと、

  • [見たり語るよりやるほうが面白い。]
  • [具体的にどういうことをするかが、そのあとに大きく影響する。行動にリンクしていないもの(主義や心映えとか)はほとんど影響がない。]
  • [大人は題材や仕組みがないと一緒に遊ぶことができない。]
  • [一緒に具体的に何かをする人が友達や人間関係だ。お茶飲んだりご飯食べたり近況報告したりするのは、今ではなくてもそのうち何かやるため。もちろん、なんとなくウマが合う人のほうが何かやりやすい。] ニコニコ学会βと、これまでのニコ技深圳観察会の活動は、上のことを学ぶいいきっかけになった。いくつか、そう感じさせた具体的な事柄を紹介する。

ニコ技深圳観察会にはこれまでいくつかのハードウェアベンチャー、インキュベータ、スタートアップなどが参加している。AgICの清水さんは参加後すぐに英語でブログ{.markup–anchor .markup–p-anchor}を書いて訪問先のSeeedに送り、今SeeedではAgICの製品をディストリビュートしている。
シリアルアントレプレナーのShaoさん{.markup–anchor .markup–p-anchor}は、ブログで書いた{.markup–anchor .markup–p-anchor}とおり中国のWebサービス、特にFINTECHまわりに興味を示し、まわりのベンチャー社長などを誘ってその後何度も深圳を訪問。よりプロ向けのクローズドな観察会を主催するようになった。また、逆にオープンな試みとしてTESLAの試乗体験会{.markup–anchor .markup–p-anchor}を、ニコ技深圳観察会と同じようなフォーマットで行い、「社内で評判になりすぎて、同時に3名+自分しか乗れないので、何か人を絞る工夫しないと」という評判になっている。この2人は、参加した起業家クラスタの中で一番ビジネスがうまくいってる2人でもある気がする。なんでブログ書くとベンチャーとして成功するのかは僕もわからないんだけど、活動をきちんと成果につなげる人が結果として優秀なんだろう。書くネタを探すために深圳に来たわけではない。

また、研究者も多くが参加している。うち長谷川先生{.markup–anchor .markup–p-anchor}は評判になるブログ{.markup–anchor .markup–p-anchor}を書いた後、HAXの選考にアプライし、直接プログラムに参加はしていないものの、「今のところはもうちょい別の形がいいけど、お互いkeep in touchして、たとえばフルタイムでこのプロジェクトやる体制とかが整ったらぜひ進めましょう」みたいな形になっているそうだ。HAXのコミュニティというかエコシステムに入ることはかなりバリューあるし、日本人でそれやってる人はあまりいないので、これも成果と言えるだろう。
ほかにも、まだ未公開なので名前は出せないけど、Seeedで進行中のプロジェクトを始めている人が何人かいる。
優秀な研究者や学生の人たちと知り合い、何人かがその後チームラボでインターンするきっかけになったりもしている。ほかのリクルート方法では不可能なクラスタで、僕の勤務先はそういうクラスタの人たちと相性がいい。つまり、少しは本業ともシナジーがある。

HAXがらみでは別に、具体的に深圳の会社に投資したい、みたいな人をHAXに紹介したり、深圳では最も高品質なEMSであるJENESISとHAXが仲良しになったり、みたいな成果が生まれている。僕が今も彼らとkeep in touchができているのはそういうことで、僕個人のバリューというわけではない。

ほかにも、ある程度気合い入れてブログ書いた人は、その人の知人から深圳について聞かれたり、過去の参加者とコンタクトしたりしているようだ。

また、メイカーズのエコシステム{.markup–anchor .markup–p-anchor}という書籍に活動をまとめたんだけど、深圳やメイカームーブメントに興味がある人向けにまとめたこの本は、木村公一朗{.markup–anchor .markup–p-anchor}さんのような中国経済のプロ研究者に多く読まれ、JETROのレポート{.markup–anchor .markup–p-anchor}に引用されたり、何人かの中国経済研究者が中国でのメイカームーブメントを研究し始めるきっかけになっているようだ。その一環でメイカーズ*アジア{.markup–anchor .markup–p-anchor}という東大で行われるイベントに僕も登壇する。
過去の参加者でその後のメイカーフェア深圳に出展したり、自分の会社にMake部を作った人も何人もいる。もっともっと派生活動が出てきてほしいし、僕がかかわってないところで勝手に盛り上がるみたいなのがあるとうれしい。

つまり、ブログを書くことや観察会をやること、本を書くことなどは、上記の人たちにとって面白い人と知り合い、お互いが何をしているかを深く知り、何かしらお互い特になる何かをやるきっかけを作るための活動なんだと思う。それは名刺交換とかよりだいぶ有用だ。別にブログ書くために深圳行くわけではない。
たまたま上記の人の共通項として、力が入ったブログを書いてるんだけど、それはそのまま、パワーを注いで考えたということなんだろう。「勉強になりました」で終わっている人や、一応ルールになっているブログも書いてない人もけっこういて、そういうビジネスの人たちがその後何か進展したかは、僕は把握してない。たぶんしてなさそうな気がする。

長々とこういうことを書いたのは、上記とニコニコ学会βの活動が、やり方がとても似ているからだ。僕がやるイベントやトークショーはたいてい濃度・密度が高いのだけど、それもニコニコ学会βとよく似ている。

■コミュニティとかエコシステムとかオープンイノベーションとか

会社組織はプロフィットを生んで株主含めてみんなで分け合うために存在するのだけど、コミュニティは参加者が幸せになるためにある。お互いが自分のやりたいことをやっていると勝手に相互利用されて得するような環境がエコシステムだ。その相互利用はコラボレーションの一形態でもある。ニコニコ学会βは一つのエコシステムだった。江渡さんを始め関わった人の多くが、一人でやるより大きな成果を得ている。ニコ技深圳観察会もエコシステムを意図している。

ニコ技深圳観察会の運営のために個別連絡したり調整したりする行為は面倒くさいし不快なことが多いけど、上で書いたような活動の中心でいられることの楽しみははるかに大きいからやっている。自分の時間がいっぱいあっても、僕は一人ではたぶん暇つぶしして終わる。ニコニコ学会βの委員会、多くはつまんないしムカつくこともいっぱいあったのだけど、準備のための事務処理ばかりだからあたりまえで、本番のシンポジウムがいいものになることがいちばん大事なのだ。同じ時間を僕個人の活動に当てるより、一緒にやっていて良かった。

だれでも参加できるようにするとウマが合わない人が入ってくるリスクは増えるんだけど、上に書いたほとんどの人はもともと僕とは全く関係がなかった人で、ほかの方法(毎回友達だけ連れていくとか)では知り合えなかっただろう。入ってくるのも出ていくのも自由にしておけば、居心地の悪くなった人は出ていくし、アクティブじゃない人の影響力は大きくならない。そういうのがオープンイノベーションなんだと思う。(提唱者の語義は、成果を出すために自社内だけじゃなくて他の研究者とチームを組むことなので、観察会は何かを作るための機関ではないので、違う。僕は「クローズドではない」という意味で使っている。)仮に僕が全然トクしない活動が派生しても、ソンしなければいいのだし、歓迎しないけどみんなに支持されるアイデアがあったなら、それは僕に足りなかったものを学ぶきっかけなのだろう。

■面白い人を集める、一緒にいるために活動がある

日本語でうまい言い方が思いつかないんだけど、今のところニコ技深圳観察会はMake Sense(何かしら効果的なことをしている)してる気がする。なぜかというと、何かの成果を出している、出せる人がコミットしたからだ。それは僕が声がけしたから集まったわけではなくて、観察会でやろうとしていた、深圳を見に行くということや成果を共有するということや、たまにトークイベントや本にまとめたりする活動が、関係者にとって面白い(やる意味のある)事だったからだ。大人はみんな忙しいから、なかなか会うためにあってはくれない。八谷さんに開いていただいた出版記念イベント{.markup–anchor .markup–p-anchor}では、山形浩生さん{.markup–anchor .markup–p-anchor}や大塚正和{.markup–anchor .markup–p-anchor}さんほか、尊敬していて大好きな人登壇者のたちや、来場してくれた過去の参加者に会えて大変にうれしかった。

ニコニコ学会βをやるための具体的な活動、たとえばイベントの告知のやり方などは、江渡さんとくとのさんがまとめたこの本に書いてある。

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江渡浩一郎 くとの
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Amazon.co.jpで詳細を見る この本はいい本だ。でも、書いてあることの大半は「やってみないとわからないこと」だ。何をやればいいかを効率的に知るためにこの本があるのだと思う。
僕は、ニコニコ学会βでこの本の内容のようなことを、いくつか自分事としてやった。多くは役割分担されたのではなくて、自分からやった。もっとうまくやる人、たとえば伊予柑{.markup–anchor .markup–p-anchor}とかががどうやっているのかを見たり、一緒に働いたりした。すごい人は、表に見えるよりもたくさんのことをやっていることを体感した。たとえばネットワークが広い人は、自分が運営してないイベントでも、面白そうなところでは必ず見かける。話題として抽出した話だけ聞くと、面白いものだけ見てるセンスがあらかじめあるように見えるけど、実際は見てる範囲がめちゃめちゃ広くて、そこからセンスを磨き、アップデートし続けてるのだ。
多少ウマが合わない人がいたり、不快なことがあっても、トータルで面白い活動だったら人は多少の違いを超えて一緒にやれることも学んだ。一緒にやれるなら、意見の違いは多様性としてむしろ力になる。ニコ技深圳観察会でも、深圳やメイカーズへの意見は一致してない。
また、江渡さんはじめ多くのニコニコ学会β関係者がそのままニコ技深圳観察会に参加して、人によってはその関係の活動を続けている。

ニコ技深圳観察会がニコニコ学会βから影響を受けたコミュニティだと思っているのは、そういうところだ。

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