2017/01/24 08:00
「人がMakerになる場所」古都・成都で開かれた中国4カ所目のMaker Faire、Mini Maker Faire 成都 2016レポート
2017/01/24 08:00
三国志の蜀の都、諸葛孔明を祀る武候祠があり、パンダや麻婆豆腐といった名物でも有名な四川省の成都で「Mini Maker Faire 成都 2016」が開かれた。
2日間で11万人の来場者を集めて大成功したMaker Faireは、同じ中国の深センのMaker Faireがスタートアップ尽くしなのとは異なるカルチャーを感じた。さまざまなMaker文化を交錯させ、「人がMakerになる場所」となったMini Maker Faire 成都 2016をレポートする。
古都・成都のMaker Faireに11万人が集まる
四川省の省都であり、数千年前の殷の時代の遺構が残る古都・成都で2016年12月3~4日に開催されたChengDu Mini Maker Faire{.markup–anchor .markup–p-anchor}は、深セン、香港、北京につづく、中国4都市目のMaker Faireとなる。


会場になった东郊记忆(成都 Easten Suburb
Memoly){.markup–anchor
.markup–p-anchor}は、古い工場跡を映画館やアニメスタジオ、音楽学校、生バンドが演奏するバーなどが並ぶカルチャー/エンターテイメント施設に改装した文化地区で、オシャレでクリエイティブな若者が集まる場所だ。日本だと高円寺界隈とミッドタウンを合わせたような感じだろうか。
そこで2日間にわたって行われたMaker
Faireは、100組の出展者、11万人の来場者を集めた。もともと週末には多くの人が集まる場所で、成都のMaker
Faireは「街のみんなのもの」と感じる。


文化・教育・伝統工芸など多様な出展物
出展100組というのはMini Maker Faireらしい小規模さだが、スタートアップが多くを占める深センのMaker Faire{.markup–anchor .markup–p-anchor}と違い、音楽やライブペインティング、伝統工芸なども含めた幅広い出展物が楽しい。
筆者はMaker Faire深センの運営メンバーをしているため深センにはよく行くが、成都とは街の雰囲気がだいぶ違う。成都の街を歩いてみると音楽教室や絵画教室、楽器屋やライブハウス、アニメショップや映画館といった文化的なものを多く見かけるのに驚く。Maker Faireの出展物もそれを反映していると感じた。
成都の市内の別の場所では、日本のデザインフェスタ的なハンドクラフトの展示会が行われていた。市内のいろいろな場所でライブ演奏を見かけ、公園ではさまざまな文化活動が行われている。深センは真夜中まで車が走り店が開いていて、人々は働くのに夢中な印象を受けるが、成都には日常生活がある。









伝統工芸やハンドクラフトは、深センのMaker Faireではほとんど見なかったものだ。逆に2015年に訪ねた北京のMini Maker Faireでは、ハンドクラフトとスタートアップばかりで、いわゆるMaker Faireっぽい電子工作をあまり見かけなかった。成都のMaker Faireではスタートアップとアマチュアの工作、テクノロジーのものとクラフトよりのものがバランスよく集められていて、どういう人が訪れても楽しめるようになっているのを感じた。うまいオーガナイズだ。
成都のMaker文化を豊かにする海外からの出展者
今回のMaker Faire 成都には海外からの出展者も多く招かれている。Maker Media{.markup–anchor .markup–p-anchor}のデール、サンフランシスコのExploratorium{.markup–anchor .markup–p-anchor}で働きつつ、個人でもTeach me to Make{.markup–anchor .markup–p-anchor}というMaker教育活動を行っているマイケルとジュディ、カナダからMakeFashion{.markup–anchor .markup–p-anchor}、日本からこさんくんのロボットバンド{.markup–anchor .markup–p-anchor}、ロボットプロレス「できんのか!」{.markup–anchor .markup–p-anchor}、ヒゲキタさんの3Dプラネタリウム{.markup–anchor .markup–p-anchor}といった世界各地のMaker Faireでおなじみの顔ぶれが成都に集まった。いずれもスタートアップや大きな利益を生み出している人たちではなく、自分の興味をつきつめて多くの人を引き付けるに至ったプロジェクトたちで、成都の人たちも引き付けていた。



成都でMaker Faireを開くに至った「天の時・地の利・人の和」
今回のMaker Faire 成都は、深センのMaker Faireをオーガナイズしている柴火創客空間(Chaihuo MakerSpace以下Chaihuo)が成都にも進出してきて行っている。Chaihuoは、この連載でも紹介したSeeedのエリック・パン{.markup–anchor .markup–p-anchor}が2011年に創業した、深セン最初のメイカースペースだ。2015年に中国の李克強首相がこのChaihuoメイカースペースを訪問し、名誉会員としてサインしたとことで、中国全体でMakerのブームが始まった。
非営利で運営していたChaihuoだったが、中国全土からの見学対応だけで時間を取られ、業務に支障が出るような状態になった。もともと中国国内のビジネスはあまり行っていなかったSeeedのもとにも、海外向けに作っていたMaker向け教材のオーダーが中国国内から求められることが重なり、SeeedはChaihuoを深セン柴火创客文化传播有限公司(Chaihuo Maker Culture Communication Co,. Ltd)として会社化することになった。
名前の「Culture Communication」に、Seeedの姿勢が明確に表れている。スタートアップブームに沸く中国でも、やはりエリック・パンの視点は人々が日々の仕事とは別のところで始める同人デザイン的なところにある。画期的なイノベーションはむしろそこから始まることが多いのは、デールほか多くのMakerたちが指摘しているところだ。
だが、中国で最も生活費も人件費も高い場所になった深センはそうした「変わったことを思い付きで始める」にはますます向かない場所になりつつある。人々は自分のビジネスをスケーリングさせるために深センに集まり、猛烈に働く。深センの人口は20–30代が60%強を占め、高齢者は2%もいない。余暇の概念の薄い場所である。ここ30年の間に急速に大きくなった人工都市に、生まれて死ぬ日常生活を見つけるのは難しい。
成都は四川省の省都であり、都市部だけで700万、周辺地区含めると1400万の人口を抱える大都市だ。中国の国家戦略として2000年から始まった西部大開発の中心地で、市内には建設中の建物が目立つ。それでも深センとはだいぶ違い、夜9時には大半の店は閉まるし、自転車は電動でなく人間がこいでいる。これまで紹介したとおり、音楽や絵画を学ぶ人も多い。生まれて死ぬ日常生活のある場所といえるだろう。
エリック・パンはMaker Faire 成都でのプレゼンで、天の時・地の利・人の和として以下のように語った。
天の時:
成都も創業ブームに沸いていて、政府も投資家もメイカーのような「新しいこと」への後押しがある
地の利:
歴史のある大都市であり、中国各経済圏とのハブであり、少数民族とのダイバーシティもあり、食べ物もおいしい成都の実力
人の和:
ローカルコミュニティが多く、メイカーブーム前から活動しているメイカーたちが多く住む


深センがスタートアップを起こしたMakerがスケールするための場所であるなら、成都は人々が新しいことを学び、Makerに「なる」ための場所として適しているとエリックは考えている。実際にそのあとの数日で、2015年以前から長く活動するメイカースペースをいくつも見た。

中国とひとことで言っても、14億の人々がいる広大な場所である。
場所ごとに異なる長い歴史と、多くの民族や文化がある。実際にMaker Faire
成都のオーガナイザーの一人、西洋的な顔立ちをした人に出身地を聞いたら新疆の生まれで、成都は地理的に隣なので多く働きに来ているようだ。
Maker Faireの役割はそうした異なる出自のMaker文化を互いに引き合わせ、触発し、楽しむことである。成都のMaker Faireは深センとは明らかにキャラクターが違うが、こちらも確かににMaker Faireらしいものであった。2017年はおそらく時期を変えて、温かい時期にまた開催する予定と聞く。また、西安など中国のほかの都市でもMaker Faireは企画されているようだ。
成都のMaker Faireは日本語・英語の出展フォームを設けて、海外からの出展も歓迎している。2017年のMaker Faire 成都が楽しみである。
By TAKASU Masakazu/高須正和{.p-author .h-card} on March 21, 2025.
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