今日から封切りになったリー・クワンユーのミュージカル。ネタバレアリですが、そもそも伝記だし、日本人で見る人そこまでいないと思うので気にせず書きます。


今日から封切りになったリー・クワンユーのミュージカル。ネタバレアリですが、そもそも伝記だし、日本人で見る人そこまでいないと思うので気にせず書きます。

シンガポールに住まわせていただいているし、リークワンユーの回顧録{.markup–anchor .markup–p-anchor}をすごく興味深く読んだので、ぜひ初日に見に行きたいと、マリーナベイサンズのシアターまで行ってきました。

感想としては、
・シンガポール好きな人なら見ても損しないデキ
・Barisan Front, Peoples Action Party, リム・キムサンみたいな名前、そこまでおぼえてなくても、シンガポール独立のストーリー(もともとマラヤ連邦に加盟していた)とかがわからないとキツい
という予想通りから出るものではありませんが、とても面白い舞台でした。

リーの言葉で、「私は4つの国歌を歌った」というものがあります。イギリス統治時代のGod save the Queen, 日本統治時代の君が代, マレーシアとして独立を果たしてからの国家、そしてシンガポール国家のMajulah Singapura。
舞台はまさにGod save the Queenで始まり、Majulah Singapuraで終わります。シンガポールの舞台で役者が唄う「君が代」を聴くのは、とても不思議な感じでした。
(日本はシンガポール占領時代に、華人を虐殺する事件{.markup–anchor .markup–p-anchor}を起こしていて、若き日のリークアンユーもギリギリ逃げ出しています。)

■若き日のリークアンユー
このミュージカルで描かれるのは独立までの姿です。今のアジアで最も豊かな国になったシンガポールではなく、経済的な急成長を成し遂げたリークアンユーと閣僚たちではありません。
太平洋戦争の前から、まだ共産主義が人々の夢だった、ベトナム戦争すら始まる前の1965年までの姿です。

そこに見られるリーの姿は、日本軍からは華人(でも、リーは英語家庭に育ったので中国語がしゃべれない)と迫害され、イギリスではアジア人と馬鹿にされ、マレーでは中華系(根からのマレー系ではない)と受け入れてもらえないかわいそうな姿でした。

リークアンユーは愛妻家として知られ、妻のクワゲオチューは、リーよりも法律の成績が良く、一緒に法律事務所を経営したばかりか、リーがつきあう相手を直感で「あの人は最終的に頼れない」などの感じ取る(リー曰く、リーが論理で判断するよりも正しかったらしい)、感性の鋭い人だったと聴きます。ミュージカルでは、様々な勢力に翻弄され、ボロボロになりながらも敢然と進むリーと、それをささえるクワの姿が終始描かれます。
再びイギリスに留学するとき、イングリッシュネームであるハリーを捨てるときなど、シーンごとに細かい台詞回しや仕草でも、「そのとき何を考えてるか」が伝わってきます。

僕が見るリー・クアンユーの写真はいつも「一発カマしてやるぞ!」という顔をしているのですが、ミュージカルで見る彼の姿は、もう少しストイックで堪え忍んでいるようでした。
(関係ないですが、息子で現首相のリー・シェンロンは、いつもすごくスカっとした笑顔をしてますね。人相にキャラクターの違いが出てるというか)

「資本主義とは自分でビールを買うことで、社会主義とはみんなでビールを飲むこと、共産主義は全員自分のボトルが持てるのだけど、中身は空っぽだ!」みたいな政治ジョークも多く、会話シーン中心に物語は進むのですが、舞台全体にビデオマッピングで映像が投影され、それでストーリーの大きいところがわかる(タンジョン・パガー選挙区、リー・クアンユー圧勝!とか)ので、英語苦手な人でもスジは追えると思います。
両脇のモニターに中国語字幕が出ます。

初日だったせいか、観客の反応もよかったです。暖かい拍手も随所に起こったし、マレーシアから独立する瞬間の演説のような名シーンを、主演のAdrian Pangが演じたビデオが流されたときなど、「じゅうぶん頑張ってるんだけどそのままではない」時には笑い声もよく起こりました。

このミュージカルが日本で上演されることはたぶんないと思うので、シンガポールの歴史やマレー半島近現代史が好きで、この時期にシンガポールにいる人は一見の価値あると思います。

By TAKASU Masakazu/高須正和{.p-author .h-card} on March 23, 2021.

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