NYから香港に戻る長いフライトの中で山形浩生さんからオススメされたのでまず「チョンキンマンションのボスは知っている」を読み始め、圧倒的な面白さで一気に読み切って、続いて前に渡邊真紀子先生からオススメされてKindle積ん読していた「その日暮らしの人類学」も読んでしまった。
新しい国を必要としてる人、インフルエンサー経済やコミュニティに興味ある人は読もう! 読書録:「チョンキンマンションのボスは知っている」「その日暮らしの人類学」by小林さやか
NYから香港に戻る長いフライトの中で山形浩生{.markup–anchor .markup–p-anchor}さんからオススメされたのでまず「チョンキンマンションのボスは知っている{.markup–anchor .markup–p-anchor}」を読み始め、圧倒的な面白さで一気に読み切って、続いて前に渡邊真紀子先生からオススメされてKindle積ん読していた「その日暮らしの人類学{.markup–anchor .markup–p-anchor}」も読んでしまった。
■タンザニア人たちの、コミュニティベースの社会生活
アフリカ研究が専門の筆者がチョンキンマンションを舞台に描いているのは、タンザニアから香港や広州などに商売にきているタンザニア商人たちの生活だ。タンザニアから天然石を輸出したり、中古車や衣類などを中国香港から輸入したり。
ところが彼らの仕事や暮らしぶりは、僕たちが思い浮かべる「輸出入業」とはだいぶ違う。たとえば、主人公であるカラマは香港に住む中古車のブローカーだが、平行して以下のようなことをしている。
-しょっちゅう新しい服を買ってInstagramを撮る。服についてタンザニア人から褒められると、その服を売ってしまう。
-しょっちゅうパーティーをしている。そこでどういう人と一緒にいるかが、受発注の信用につながる
-香港タンザニア人協会を立ち上げた。同協会は不法滞在者も多く含まれるが、タンザニア人が香港で亡くなった際の遺体を届けるときなどは、数十万円単位の寄付を一晩で集めている。
どれが本業でもあり、副業でもある。慈善家でもあり詐欺師でもある。
不法移民や難民が多いタンザニア人たちの、香港でのコミュニティ。そこでは全うじゃない商売、売春や偽造品の販売、詐欺などで生計を立てている人もいる。というより、同じ人間が時に何かの法律に違反していることや、犯罪者と協力関係にあることが珍しくない。浮き沈みの激しい人々の間では貯金などの生活防衛の仕組みよりも、金があるときに羽振りの良さを見せて人の世話を焼いておくことのほうが価値がある。
ゴミゴミしたチョンキンマンションに不法滞在しながら、一発当てた時の彼らはそのへんの香港人よりさらに羽振りがよかったりする。金持ちと貧乏人でさえそこでは境界がなく、同じ人間が極度に貧乏なときと大金持ちな時がある。いつでもリスタートでき、いつ転落してもおかしくない。信用も評価もその場限り。
固定されたメンバーもなく、仕事と趣味の境目も、本業と副業と境目もなく、あらゆる人が友達同士であり、かつ自分自身以外は誰も信用しない人たちの中で、それでも社会はできあがり、相互扶助と利用の仕組みは存在し、リアルな関係とテクノロジーを組み合わせて、パートナーシップやクラウドファンディングが行われていく。
そうした社会のできあがり方はすごく知的興奮をおぼえる。日本の様々に固定されてしがらみに満ちた社会との対比を考えるとなおさらだ。
■人類学者である著者の視点と圧倒的な調査力
アフリカを専門にする人類学者の著者は、スワヒリ語が喋れる日本人として、チョンキンマンションを舞台にしたコミュニティに入っていく。そこで様々な人々にインタビューし、ビジネスについていくことで、彼らのコミュニティとエコシステムを解き明かし、小説誌にエッセイとして掲載されていた筆力で生き生きと再生させる。
「その日暮らしの人類学」は、そうした香港でのタンザニア人社会に加え、母国タンザニアでの商売や、深圳での山寨携帯なども含めた「今を生きる、その日暮らしの人生」を描き出す。
どう考えても怖いし、被害者のことを考えると許しがたいし、付き合うにはうさんくさすぎる人たちに対して、安易に正義やピカレスクロマン、現代社会批判に陥らない視線。
著者は絶対に、自分たちの基準を彼らに当てはめない。その自由で透徹したスタンスが、タンザニア人たちの人生を僕たちの社会と地続きに連携させて見せ、彼らの暮らしぶりを社会生活を送る人すべてへのヒントに昇華させる。バニーの「ハードウェアハッカー{.markup–anchor
.markup–p-anchor}」がギークの電子機器いじりを創作やイノベーション全般に昇華させているように、徹底した思考がルポルタージュを研究にする。これぞPh.D。犯罪まがいや犯罪そのものの経済行為の中から、「法律違反だけど倫理的にOKなものとNGなもの」のような区別を発見するプロセスなどには驚嘆する。ここまで深く、新しい社会がわかるものだろうか。
弱者保護、硬直化した会社組織に対するアンチテーゼ、「変化の激しい社会へどう対応していくか」といった、僕たちの抱える普遍的な問題解決のヒントが、この2冊の本にはたくさん含まれている。ここにあるのは新しい働き方の、少なくともそのヒントなのだ。
インターネットとLCCほかの力により、世界がグローバル化され、タンザニアと香港の距離が物理的にも情報的にも近づいたことや、世界が豊かになってここの登場人物たちも物理的な餓死や文字通りの文盲からは遠くなったことは、この本に書かれていることの大事なバックグラウンドだ。その意味で「進歩」と通じるテーマを感じた本でもある。世界の進化はすばらしい。人類全体としての視点で見れば、人は豊かで自由になっている。
「人類全体を舞台にしたリビングラボ」 読書録:進歩:
人類の未来が明るい10の理由 (著:ヨハン ノルベリ 訳:山形浩生)
*未来が過去より悪くなったことはない。*medium.com{.markup–anchor
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しょっちゅう香港に泊まる僕にとって、安くてアクセスが良くて個室が確保できるチョンキンマンション(重慶大厦)は慣れ親しんだ場所だ。チェックインがちょっと面倒(フロントのあるフロアと部屋のあるフロアが違い、スーツケース持って歩く必要があることが多い)なのと、エレベータがなかなか来ないことなどを嫌がって最近は別の所に泊まってることが多いが、隣のミラドールマンション含め、映画「恋する惑星」などのロマンを含め、今でも時々泊まる。それでもGFにたむろするタンザニア人たちの間の物語は、想像もしていなかった。
僕自身はそうした香港に対するロマンからこの本を読んだんだけど、そうした話に関わらず、「新しい働き方」について考えている人たちはぜひ読むといいと思う。

By TAKASU Masakazu/高須正和{.p-author .h-card} on January 14, 2020.
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